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3/9カメダ事件控訴審傍聴報告

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3/9カメダ事件控訴審傍聴報告

 3月9日、名古屋高裁金沢支部で中国人研修生にたいする不当労働行為(カメダ事件)の第1回口頭弁論が開かれ、傍聴しました。裁判長は双方から提出された書類を確認し、10分ほどで結審しました。その後裁判長から和解勧告がおこなわれ、三者は別室に移動し、和解の成否、判決期日がわからないまま、法廷を後にしました。

 控訴理由書(A4版25ページ)によれば、控訴審での争点は、
(1)研修期間中の時間内作業及び時間外作業について、中国人研修生は労基法及び最賃法の「労働者」に該当するか、
(2)研修期間中の賃金債権についての消滅時効の援用は信義則に違反するか、
(3)KKカメダは中国人研修生の研修手当から所得税を控除することができるか、
(4)KKカメダと石川県輸出縫製品工業協同組合は共同不法行為をおこなったか、
(5)KKカメダらは本件帰国費用分を不当に利得したかの5点である。
 それぞれの争点について要約レポートします。(文責は当会)

(1)中国人研修生は労働者です
 第1審判決は、中国人研修生が研修生であった期間(2009.11.19~2010.11.18)の時間内作業及び時間外作業は、KKカメダの指揮監督の下で労務を提供しており、労基法及び最賃法の労働者に該当すると認めました。

 このように、第1審判決は中国人研修生の作業が労働であることを認めながら、同時に研修としての側面を認めたことは誤りです。たまたま労働の内容が研修の内容と重なる面があったとしても、それを研修として評価できません。たとえば、午後5時以降に先輩の送別会でカラオケに行ったことを「日本文化や地域文化の研修」と言えるはずがありません。

 研修(実務)といえるためには、KKカメダが、入国管理局に提出した研修期間の研修内容、各研修科目の指導員、月ごとの研修時間などがきめられた研修(実務)実施予定表のとおりに実施しなければならないのです。
 また、内職について、第1審判決は内職の遂行方法についてKKカメダが指導をしなかったとして、内職については労働者性を否定しました。しかしこれは事実誤認です。屋敷の指示で、時間も場所も指定されており、したがって内職は労働者としての仕事でした。

(2)消滅時効の援用は、権利の濫用
 第1審判決では、KKカメダによる消滅時効の援用が権利を濫用し又は信義則に違反するものではないと認定しましたが、事実誤認と法的評価に誤りがあり、消滅時効の援用は権利を濫用するものであり信義則上許されません。

 ①不適正な受入行為にたいしては、新指針では5年間の受入停止となるなど、旧指針(3年間)より処分が厳しくなっています。

 ②旅券、通帳の保管は、中国人研修生が希望したものではありません。第1審判決は旅券、通帳の預かりが指針に反することを認めながら、それを許容する判断をしたのは、指針の趣旨を無視するものです。指針では、旅券を取り上げることは、人権侵害であるとしています。通帳は、本人が所持することによって、自由に金銭の出し入れができるのであって、通帳の取り上げは財産権の侵害になります。KKカメダは旅券、通帳を担保のように取り上げているのですから、中国人研修生はKKカメダに従わざるを得ない地位に置かれていたのです。

 ③中国人研修生はKKカメダに残業をさせるように依頼したことはありません。KKカメダは中国人研修生を受け入れる以前から、指針で禁止されている時間外作業を中国人研修生にさせることを予定し、当初から、著しく低い単価(時給350円)で中国人研修生に時間外作業や内職をさせることを予定していたことは明らかです。

 ④中国人研修生が1カ月10万円以上の金銭を得ていたのは、1カ月あたり80時間から200時間という過労死ラインを優に越える長時間の残業をさせていた結果であって、KKカメダが十分な残業代を支給していた結果ではありません。中国人研修生は長時間の残業を拒否できず、しかも過酷な長時間労働によって慢性的に睡眠不足と疲労を抱えていました。屋敷は居眠り防止のために内職は立ってするように指示していました。

 ⑤KKカメダは中国人研修生の実習生時代の残業代の満額を支払っていたわけではありません。中国人研修生が支援団体に保護を求め、労基署に残業代が不払いであることを申告し、同署の是正勧告を得て、本来得られるべき残業代が支払われたのです。KKカメダの悪質性が際立っています。

 ⑥KKカメダは研修手当と時間外手当の支給方法を変えていたのは、KKカメダが時間外に作業をさせることは禁止されていることを認識しており、外部からの監査を受けた際、研修生に長時間の残業や内職をさせているという違法行為を隠蔽する目的があったからです。

 このように、KKカメダは中国人研修生にたいし労働関連法規の適用を潜脱する意図をもって、外形上はあたかも研修生であるかのように処遇を続けて利益を享受しながら、他方、中国人研修生から残業代を請求されるや、消滅時効を援用しています。このようにKKカメダの主張は、信義則に反するものであることは明白であり、到底認めることはできません。
 
(3)研修手当から所得税まで収奪
 KKカメダは、2011年12月分から所得税を徴収しなくなりましたが、それ以前は、免税を受けるために必要な手続きを怠っていました。直ちに還付手続をされたい。

(4)KKカメダと組合の共同不法行為
 ①第1審判決は明確な労基法違反があっても違法行為と評価せず、労基法を無視する驚くべき判決でした。KKカメダと中国人研修生との間で三六協定を締結しなかった結果が、控訴人らに月80時間ないし200時間もの残業を強いる結果となったのです。第1審判決は明確な労基法違反があっても違法行為と評価せず、労基法を無視する驚くべき判決でした。

 ②第1審判決では、KKカメダは、研修実施予定表に従って研修を実施せず、多くの週に休日を与えず、長時間の時間外作業や内職をおこなわせ、労働者として扱わなかった結果、労務提供にたいして低額な対価しか支払っていないと認定しました。

 これらが指針に違反する明確な不正行為であることは明らかであるにもかかわらず、中国人研修生にたいする不法行為と評価しないのであれば、KKカメダによる指針違反を是認することになります。

 ③第1審判決は、KKカメダが支給した金額は中国人研修生の生活を脅かすほど低い水準ではなかったとして、違法行為と評価しませんでした(前述)。

 ④KKカメダは残業の隠蔽工作をしています(前述)。

 ⑤KKカメダは旅券、通帳を強制的に取り上げています(前述)。

 ⑥寮環境の劣悪さについて、そもそも寮として使用されていた建物は住居用建物ではありませんでした。従前は工場として使用されていた築30年程度の3階建ての建物であり、研修期間及び実習期間当時も倉庫として併用されていいました。

 第1審判決はKKカメダ代表者の供述を鵜呑みにして、寮の管理は研修生や技能実習生に任されていたと認定しましたが、ミシンや衣類等KKカメダの所有物も保管されている以上、寮全体の管理が研修生らに任されているとは言えません。

 第1審判決は研修期間開始当初、中国人研修生の居室には、エアコンや扇風機は存在せず窓を開けることもできず、扇風機や電気ストーブを廃品回収センターで拾って使用したことを認定しました。

 法務省基準省令は、研修生を受け入れる条件として、「研修生用の宿泊施設を確保していること」を定めています。そして、入居の日から生活できるように、冷暖房器具(扇風機、石油ファンヒーター、こたつ)を用意することを要求しています。KKカメダは、この規定に違反していました。

 ⑦第1審判決は寮に猫が侵入し、蚤が大量発生したことについて、寮の管理は中国人研修生・技能実習生に任されていたからKKカメダには責任がないとしました。しかし、前述したように、寮の管理はKKカメダの責任であり、寮の壁の穴を塞ぎ、猫が侵入しないように対処すべきでありました。

 中国人研修生が猫・蚤対策を要求して、KKカメダが対策をとりましたが、解決に3カ月もの時間を要しており、中国人研修生の訴えを真摯に受け止めて対策を執ったといえません。

 ⑧第1審判決では、石川県輸出縫製品工業協同組合(組合)がKKカメダの監査を旧指針に則った頻度でおこなわれていたと認定しました。しかし、組合は指針で明記されている監査報告書を入管に提出しておらず、組合が監査をおこなったかどうかを公的に立証するものは何もありません。

 しかも、監査の目的が研修生や実習生が指針に則って正しく処遇されているかを監査することにあるにもかかわらず、組合はKKカメダにおいて、研修実施予定表にしたがった研修が実施されていない事実、指針に反して時間外作業が実施されている事実、残業代も支払われていない事実を見逃し、KKカメダに是正する措置をとりませんでした。

 旅券、通帳の管理(取り上げ)は不法行為とはいえないとして、組合の責任をも不問に付しました。組合は、中国人研修生の旅券、通帳を取り上げ、その後も返還せず、KKカメダにそのまま交付し、上記不法行為に積極的に荷担していたのであって、KKカメダとともに共同不法行為が成立することは明らかです。

 第1審判決では、組合は中国人研修生に検定費用を負担させた点は指針に反すると認定しながら、不法行為を構成するものであるとまでは言いがたいと認定したにもかかわらず、組合が指針に反したことを是認しています。

 ⑨結論として、以上の諸点から、KKカメダ及び石川県輸出縫製品工業協同組合に共同不法行為が成立することは明らかです。

(5)KKカメダは帰国費用分を不当に利得
 第1審判決は中国人研修生が無断でKKカメダと離れたので、予定どおりに帰国することは不可能になったものと判断して、KKカメダがキャンセル料を負担したと認定しています。しかし、中国人研修生は、2012年10月30日に11月19日まで有給休暇を取得する旨を通知し、同年11月1日、中国人研修生の連絡先を支援団体とする旨を明らかにしていました。したがって、中国人研修生は無断でKKカメダのもとを離れたわけではありません。KKカメダがキャンセル料を負担したのは、KKカメダの都合に過ぎません。

 また、第1審判決では、KKカメダは中国人研修生との雇用契約が終了する4日前の11月15日に帰国日を設定して、帰国担保措置を十分にとったと認定しましたが、しかしKKカメダは中国人研修生にたいし、連絡が可能であったにもかかわらず、15日を帰国日とすることを連絡していませんでした。KKカメダは中国人研修生の了承をとらず、一方的に帰国日を設定したに過ぎません。

 第1審判決では、中国人研修生が当該航空券を使用して帰国することが困難であったという事情が認められないと認定しましたが、労基署は、KKカメダにたいして、2012年11月5日、残業代を支払うように是正勧告を出しました。KKカメダは2012年12月14日に、残業代を同年12月31日及び2013年1月31日に分割して支払う旨を通知しました。

 中国人研修生は、労基署による是正勧告をKKカメダが履行したことを確認して2013年2月4日に帰国しました。このように、中国人研修生は、残業代の振り込みを確認する前に帰国することはできないのであって、KKカメダが用意した当該航空券を使用して帰国することが困難でした。

 以上のように、KKカメダは、中国人研修生が帰国担保措置をとる義務を怠ったことは明らかである。中国人研修生は、自己の負担で帰国したのであって、KKカメダは中国人研修生の帰国費用に関して、利得を得たのであるから、不当利得金として返還すべきなのです。

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