放水し、追いかけ、衝突したのは日本の漁業取締船だ。 排外主義をはね返せ!
2年ほど前(2017年12月31日)、「北朝鮮パッシングと日本海(東海)大和堆」を投稿したが、その後も、EEZ=大和堆=イカ漁をめぐる排外主義が過熱しており、今回の衝突事件についても、メディア上では「戦争をしてでも、漁場を取り返せ」の論調が渦巻いている。
第9管区海上保安本部(新潟)は取締船「おおくに」の乗組員に事情聴取し、映像も確認しているが、情報を出し渋り、真実をうやむやにしようとしているようだ。
真実はどこに
10月7日、能登半島沖の大和堆で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の漁船と水産庁の漁業取締船(1300トン)が衝突し、北朝鮮漁船が沈没した。
当日午前9時前から200メートルの間隔をあけて「退去警告」をおこない、9時4分には取締船は放水の届く位置(十数メートル?)まで接近し、放水し、逃げる漁船を追いかけ、3分後の9時7分に、取締船が船首を漁船の左舷中央部に衝突させ、9時25分に沈没し、60人の乗組員は海に投げ出されたのである。
マスコミの初報は、漁船の方からぶつかってきたと報道していたが、このイメージ図と取締船の傷の跡を見れば、取締船から突っ込んでいったことは歴然としている。
水産庁は、「全員救助」後、北朝鮮漁船に引き渡したのだが、漁船の乗組員に「衝突の真実」を証言されるのを怖れたのだろう。そして、第9管区海上保安本部(新潟)は、8日以降は捜索をせず、早々と漁船の乗組員を見捨てる方針を出した。これも、海上を浮遊している漁船乗組員を救助しては、「真実」が明らかになるからであろう。
現場は水深が1000メートル以上の深海で、沈没漁船の船内に取り残された乗組員の救助は困難だといって、漁船引き揚げの努力を放棄した。山梨県で行方不明になった女児の捜索には、2週間以上かけているのに、乗組員の捜索を1日で打ち切るなど、人道にもとる行為である。水産庁と海上保安庁は衝突・沈没の責任を果たすためにも、せめて、船中に取り残されているかも知れない遺骨を捜索し、家族に返すのは、当然の道義だろう。
しかも、小型漁船に衝突しておいて、その真実も明らかにせず、北朝鮮に抗議する安倍の姿は、億単位の金をもらって、被害者だと主張する関西電力の経営陣と同じではないか。
大和堆について
日本海(東海)は概ね3000メートルほどの水深だが、中央部に大和海嶺があり、北東から南西方向に深さ2000mに及ぶ渓谷によって分割され、日本に近い南側を大和堆、北側を北大和堆と呼んでいる。
能登半島から北北西約300キロのあたりで、水深は浅い部分で250メートルほどである。
今回事件があった場所について、EEZ内の水深が1000メートルと発表しているが、正確な位置を発表していない。大和堆よりも深い位置で、北側の「渓谷」あたりではないか。日本政府が主張するEEZの外側の可能性がある。
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排他的経済水域(EEZ)
安倍首相は「わが国の排他的経済水域内での外国漁船による違法操業防止のため、毅然と対応する」と言ったが、そもそも、「排他的経済水域」とはなにかについて、あらためて整理しておこう。
元来は両国漁民は大和堆と北大和堆を好漁場として共有してきたのだが、日帝は「大和堆は排他的経済水域(EEZ)である」と主張し、北朝鮮漁船を排除してきた。
歴史上最初に、領海外の公海上の漁業管理権を宣言したのは、1945年、米帝トルーマン大統領である。その後、1982年の国連海洋法条約で、沿岸国が海洋および海底下の生物・鉱物資源の探査・開発・保存・管理などに関して「主権的権利」をもつ水域として、沿岸から200海里(約370キロメートル)を超えてはならないとされた。
EEZとは帝国主義の領土拡張主義から発出し、海洋資源を占有するために引いた「国境」である。現在は、約160カ国・地域が排他的経済水域を設定しており、日帝も1996年6月に国連海洋法条約を批准した際、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定した。
しかし、EEZとは、「主権(他国の意思に左右されず、自らの意思で国民および領土を統治する権利)」とは一線を画した「主権的
権利」と呼ばれている。したがって、大和堆は日帝の「主権」の及ぶ範囲ではなく、基本的に公海であり、歴史的にも北朝鮮漁民と日本漁民がともに漁業をおこなってきた海域である。しかし、日朝関係の対立的状況(国交断絶)のなかで、日朝漁民を主体にした協議が成立せず、日帝が一方的に大和堆を「主権的権利」のおよぶ海域と指定して、北朝鮮漁船を排除しているのである。
マスコミ上に乱舞する「排他的経済水域(EEZ)」「違法操業」という言葉はあたかも日本固有の「権利」が侵害されているかのようなニュアンスをかもしだし、この海域で日本の財物が盗まれたような被害者意識を形成している。大和堆で操業している北朝鮮漁船を指して、「赤の他人が家に入り込んで居座り、食糧を盗む」(2017/12/15同紙)という谷本石川県知事の暴言がそのよい例である。
2年ほど前(2017年12月31日)、「北朝鮮パッシングと日本海(東海)大和堆」を投稿したが、その後も、EEZ=大和堆=イカ漁をめぐる排外主義が過熱しており、今回の衝突事件についても、メディア上では「戦争をしてでも、漁場を取り返せ」の論調が渦巻いている。
第9管区海上保安本部(新潟)は取締船「おおくに」の乗組員に事情聴取し、映像も確認しているが、情報を出し渋り、真実をうやむやにしようとしているようだ。
真実はどこに
10月7日、能登半島沖の大和堆で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の漁船と水産庁の漁業取締船(1300トン)が衝突し、北朝鮮漁船が沈没した。
当日午前9時前から200メートルの間隔をあけて「退去警告」をおこない、9時4分には取締船は放水の届く位置(十数メートル?)まで接近し、放水し、逃げる漁船を追いかけ、3分後の9時7分に、取締船が船首を漁船の左舷中央部に衝突させ、9時25分に沈没し、60人の乗組員は海に投げ出されたのである。
マスコミの初報は、漁船の方からぶつかってきたと報道していたが、このイメージ図と取締船の傷の跡を見れば、取締船から突っ込んでいったことは歴然としている。
水産庁は、「全員救助」後、北朝鮮漁船に引き渡したのだが、漁船の乗組員に「衝突の真実」を証言されるのを怖れたのだろう。そして、第9管区海上保安本部(新潟)は、8日以降は捜索をせず、早々と漁船の乗組員を見捨てる方針を出した。これも、海上を浮遊している漁船乗組員を救助しては、「真実」が明らかになるからであろう。
現場は水深が1000メートル以上の深海で、沈没漁船の船内に取り残された乗組員の救助は困難だといって、漁船引き揚げの努力を放棄した。山梨県で行方不明になった女児の捜索には、2週間以上かけているのに、乗組員の捜索を1日で打ち切るなど、人道にもとる行為である。水産庁と海上保安庁は衝突・沈没の責任を果たすためにも、せめて、船中に取り残されているかも知れない遺骨を捜索し、家族に返すのは、当然の道義だろう。
しかも、小型漁船に衝突しておいて、その真実も明らかにせず、北朝鮮に抗議する安倍の姿は、億単位の金をもらって、被害者だと主張する関西電力の経営陣と同じではないか。
大和堆について
日本海(東海)は概ね3000メートルほどの水深だが、中央部に大和海嶺があり、北東から南西方向に深さ2000mに及ぶ渓谷によって分割され、日本に近い南側を大和堆、北側を北大和堆と呼んでいる。
能登半島から北北西約300キロのあたりで、水深は浅い部分で250メートルほどである。
今回事件があった場所について、EEZ内の水深が1000メートルと発表しているが、正確な位置を発表していない。大和堆よりも深い位置で、北側の「渓谷」あたりではないか。日本政府が主張するEEZの外側の可能性がある。

排他的経済水域(EEZ)
安倍首相は「わが国の排他的経済水域内での外国漁船による違法操業防止のため、毅然と対応する」と言ったが、そもそも、「排他的経済水域」とはなにかについて、あらためて整理しておこう。
元来は両国漁民は大和堆と北大和堆を好漁場として共有してきたのだが、日帝は「大和堆は排他的経済水域(EEZ)である」と主張し、北朝鮮漁船を排除してきた。
歴史上最初に、領海外の公海上の漁業管理権を宣言したのは、1945年、米帝トルーマン大統領である。その後、1982年の国連海洋法条約で、沿岸国が海洋および海底下の生物・鉱物資源の探査・開発・保存・管理などに関して「主権的権利」をもつ水域として、沿岸から200海里(約370キロメートル)を超えてはならないとされた。
EEZとは帝国主義の領土拡張主義から発出し、海洋資源を占有するために引いた「国境」である。現在は、約160カ国・地域が排他的経済水域を設定しており、日帝も1996年6月に国連海洋法条約を批准した際、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定した。
しかし、EEZとは、「主権(他国の意思に左右されず、自らの意思で国民および領土を統治する権利)」とは一線を画した「主権的
権利」と呼ばれている。したがって、大和堆は日帝の「主権」の及ぶ範囲ではなく、基本的に公海であり、歴史的にも北朝鮮漁民と日本漁民がともに漁業をおこなってきた海域である。しかし、日朝関係の対立的状況(国交断絶)のなかで、日朝漁民を主体にした協議が成立せず、日帝が一方的に大和堆を「主権的権利」のおよぶ海域と指定して、北朝鮮漁船を排除しているのである。
マスコミ上に乱舞する「排他的経済水域(EEZ)」「違法操業」という言葉はあたかも日本固有の「権利」が侵害されているかのようなニュアンスをかもしだし、この海域で日本の財物が盗まれたような被害者意識を形成している。大和堆で操業している北朝鮮漁船を指して、「赤の他人が家に入り込んで居座り、食糧を盗む」(2017/12/15同紙)という谷本石川県知事の暴言がそのよい例である。