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精選 尋常小学校修身書』(2002年)を読む

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『精選 尋常小学校修身書』(八木秀次2002年)を読む

 著者・八木秀次は「(編集では)内容は今日読んでも古びていないものを採用し、今日通用しないものや誤解される可能性のあるものは採用しなかった」と述べている。八木が「今日通用させたい」という強い意志を、吉田松陰(6項)から見てみよう。そこには天皇賛美、国体明徴、尊皇愛国、忠君愛国がストレートに語られている。

 八木秀次は「新しい歴史教科書をつくる会」の第3代会長だったが、2006年に解任され、その後脱退した。同年「日本教育再生機構」を立ち上げ、理事長に就任した。同会は道徳の教科化を提言している。2007年「教科書改善の会」(代表:屋山太郎)結成に参加し、育鵬社版歴史、公民教科書を編集・発行した。2008年には、安倍首相の私的諮問機関「教育再生実行会議」の委員に就任した。憲法9条改憲、天皇の元首化、国防の義務、男女平等(憲法24条)の改正などを主張している。

 以下に一部抜萃するが、八木が何を主張したいのかについては、解説はいらないだろう。八木らはこのような感性を以て、小学生や中学生用の「道徳教科書」をつくろうとしている。

第22 忠君愛国(第4期<1934年~>巻5)
 松陰は「我が国は万世一系の天皇のお治めになる国であって、我等は祖先以来、天皇の臣民である。天皇は皇祖皇宗の大御心のままに臣民をいつくしませ給い、臣民は祖先の志をついで天皇に忠義を尽くして来た。天皇と臣民とは一体をなし、忠と孝とが一致している。これが我が国の万国にすぐれたところである。誰でも日本人と生まれた者は、我が国体が斯様に尊いことをわきまえるのが、最も大切なことである」と信じ、…

 松陰は、30歳でなくなりましたが、国体を明らかにし、皇室を尊び、我が国を盛にしようとしたその精神は、弟子たちにうけつがれ、立派な人物が出て、御国のために尽くしました。

第23 兄弟(第4期<1934年~>巻5)
 松陰は妹たちをかわいがりました。…大きくなって他家へ嫁入りしてからも、手紙をやって、家をととのえ子供を教える道をこまごまと書いて与えました。

第24 父母(第4期<1934年~>巻5)
 百合之助は、神を敬い祖先を尊びました。毎朝早く起きて井戸から新しい水をくみ、祖先の霊前に供えて拝みました。祖先の祭日には、殊につつしんでお祭りをしました。毎月1日には、必ず、身体を清め衣服をあらためて、氏神に参りました。

 松陰の母は、瀧子といいました。20歳の時、百合之助に嫁し、よく夫を助けて野に出て田畑を耕したり、山へ行って薪をとったりして、仕事に骨折りました。又よく姑に事え、我が子の養育につとめ、裁縫・洗濯のことから家事一切をひとりで引受けて、かいがいしく立働き、馬を飼う世話まで自分でしました。

 松陰の父母は、かように心をあわせて、父は業務にはげみ、母は夫を助けて家をととのえ、又共に我が子の教育に力を用いましたので、家も栄えるようになり、子供は皆心掛けのよい人になりました。中にも松陰は、国のために尽くし、度々難儀に出あいましたが、いつも父母は、我が子をはげましたり、いたわったりして、よく尊皇愛国の道に尽くさせました。

第4 父と子(第5期<1941年~>初等科修身4)
 「梅太郎は何を祈った。」と、父がたずねた。
 「はい。皇室のみさかえを祈り、殿様のご無事を願いました。」
 「うむ。なるほど。では、大次郎は。」
 「私も、第1に皇室のみさかえを祈りました。それから、自分がほんとうの日本国民になることをお誓いいたしました。」
 「ほんとうの日本国民とは、どういうことか。」
 「臣民としての道を守り、命をささげて陛下の御ためにつくすのが、ほんとうの日本国民だと、玉木のおじさまが教えてくださいました。」

第5 師につかえる(第5期<1941年~>初等科修身4)
 師につかえるのに、私心があってはならない。しかもどんな場合にも、自分をみがくのが、学問するものの態度である。松陰のおこないは、つねに自分の学ぶところと、一つになっていたのだ。

第6 松下村塾(第5期<1941年~>初等科修身4)
 この塾で、松陰が教えた学問はいろいろある。もっとも松陰の力こぶを入れたのは、皇室を尊び、至誠を以て貫き、実行力を持つ、という精神を養うことであった。…このせまい塾に集まった青少年の中から、久坂玄瑞、高杉晋作を始めとして、明治維新のおり、身を以て国事につくした大人物がたくさん出た。

 塾は、だんだんと大きくなって行った。そうして、み国の柱となる忠義の士がたくさんに生まれたのである。

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