「ミャンマーと日本」についての整理(2)
(2)ミャンマーと日本の政財界
2021年6月29日付『北陸中日新聞』は概略次のように報道している。
「日本ミャンマー協会会長の渡邉秀央元郵政相が代表取締役を務める株式会社「日本ミャンマー開発機構」が、国軍系企業との合弁で、国防省が所有する土地(注1)の開発を進めている。」
「事業が進めば、人権侵害を繰り返す国軍を実質的に支援する恐れがある。」
「百社超の企業を会員に擁する日本ミャンマー協会は、最高顧問に麻生太郎副総理兼財務相(当時)が就くなど与野党の有力議員(注2)が役員に名を連ね…。」
「日本ミャンマー開発機構は2016年、国軍系企業との合弁会社を登録。2019年の国連報告書は、この合弁会社を含む国軍系企業との取り引きが少数民族ロヒンギャを迫害する国軍の活動資金になると指摘。」
「(国防省所有地の)地代は約3億円。国軍と国防省は実質的に一体のため、地代は国軍に流入する。」
(注1)国軍が所有する軍事博物館の跡地。
(注2)政治家:麻生太郎、渡邉秀央、古賀誠、甘利明、魚住裕一郎、加藤勝信、田中慶秋、浜田靖一、安住淳、福山哲郎
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日本政府公認で、国軍に資金流入
『北陸中日新聞』(6/29)で報道されている「国防省所有の土地開発」とは、ヤンゴン一等地(中央駅から1キロ)にある国軍所有の旧軍事博物館跡地に、ホテルやオフィス、商業施設を建設する巨大事業「Y Complex」のことである(2018着工~2021年完成)。
このプロジェクトを運営しているのは、現地法人の「Y Complex」社で、日本側が8割、ミャンマー側が2割を出資している。約343億円規模の「Y Complex」には、国際協力銀行(JBIC)、東京建物、ホテルオークラ、みずほ銀行、三井住友銀行、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、フジタなど数多くの日本企業が参加している。
メコン・ウォッチの木口由香さんによれば、ミャンマー法人のYTTC社は兵站局副司令官と契約し、国軍から土地を借り、その支払先は「防衛口座」である(資料4)。国土交通省のHPにも、「国土交通大臣は本日(2017.7.28)、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)による、ミャンマー・ヤンゴン中心部における複合都市開発事業への出資(約 56 億円)及び債務保証(約47 億円)について認可しました」と書かれており(資料2、3)、日本政府公認で、資金(3億円)が国軍に流れているのである。
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ティワラ経済特区について
経済特区とは、経済発展のために特別な地位(外国資本や技術の導入など)を与えられている地域を指す。
アジア諸国では、1978年の中国をはじめ、台湾、香港、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、インド、パキスタンなど、多数の経済特区が設けられている。
ミャンマーでは、2011年ティン・セン政権が外資導入路線をとり、経済特区法を制定した。現在、ティワラ、チャオピュー、ダウェーの3カ所に経済特区が設けられているが、実働しているのはティワラのみである。
日本ミャンマー協会
渡邉秀央(中曽根政権時の官房副長官)らは、ネウイン軍政時代から深い関係を持ち(1887年~)、2012年3月に日本ミャンマー協会(会長:渡邉秀央、最高顧問:麻生太郎)を設立した。2021年時点で、正会員+賛助会員=137社にのぼっている(資料12)。
日本政府は、2011年から2018年までに、ミャンマー政権にたいして累計1兆1,368億円の有償資金協力をおこなったほか、無償資金協力、技術協力、さらには過去の債務免除等のかたちで、多大な支援をおこなっている。また、日本企業はシンガポール(タックスヘイブン=租税回避地)に合弁企業をつくり、そこからミャンマーにも投資している。
安倍政権によるてこ入れ
「ティワラ経済特区」は2012年から日本とミャンマー政府が共同で建設に着手し、2013年安倍首相(当時)は日本企業幹部40人とともにミャンマーを訪問し、経済特区建設(発電、送電、変電、港湾、通信、上水道、道路などのインフラ整備)のために総額910億円の支援を表明した。
その後、ミャンマー日本商工会議所(1996年~)の会員企業は三菱商事、住友商事、丸紅など400社にのぼり(資料13)、本格的なミャンマーへの経済進出(侵略)が始まった。現在、「ティワラ経済特区」には、50社以上の日本企業が進出しており、利益をむさぼっている。
「ティワラ経済特区」以外にも、国際協力機構(JICA)による「ダウェー経済特区」の開発が進められている。
(つづく)
(2)ミャンマーと日本の政財界
2021年6月29日付『北陸中日新聞』は概略次のように報道している。
「日本ミャンマー協会会長の渡邉秀央元郵政相が代表取締役を務める株式会社「日本ミャンマー開発機構」が、国軍系企業との合弁で、国防省が所有する土地(注1)の開発を進めている。」
「事業が進めば、人権侵害を繰り返す国軍を実質的に支援する恐れがある。」
「百社超の企業を会員に擁する日本ミャンマー協会は、最高顧問に麻生太郎副総理兼財務相(当時)が就くなど与野党の有力議員(注2)が役員に名を連ね…。」
「日本ミャンマー開発機構は2016年、国軍系企業との合弁会社を登録。2019年の国連報告書は、この合弁会社を含む国軍系企業との取り引きが少数民族ロヒンギャを迫害する国軍の活動資金になると指摘。」
「(国防省所有地の)地代は約3億円。国軍と国防省は実質的に一体のため、地代は国軍に流入する。」
(注1)国軍が所有する軍事博物館の跡地。
(注2)政治家:麻生太郎、渡邉秀央、古賀誠、甘利明、魚住裕一郎、加藤勝信、田中慶秋、浜田靖一、安住淳、福山哲郎


日本政府公認で、国軍に資金流入
『北陸中日新聞』(6/29)で報道されている「国防省所有の土地開発」とは、ヤンゴン一等地(中央駅から1キロ)にある国軍所有の旧軍事博物館跡地に、ホテルやオフィス、商業施設を建設する巨大事業「Y Complex」のことである(2018着工~2021年完成)。
このプロジェクトを運営しているのは、現地法人の「Y Complex」社で、日本側が8割、ミャンマー側が2割を出資している。約343億円規模の「Y Complex」には、国際協力銀行(JBIC)、東京建物、ホテルオークラ、みずほ銀行、三井住友銀行、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、フジタなど数多くの日本企業が参加している。
メコン・ウォッチの木口由香さんによれば、ミャンマー法人のYTTC社は兵站局副司令官と契約し、国軍から土地を借り、その支払先は「防衛口座」である(資料4)。国土交通省のHPにも、「国土交通大臣は本日(2017.7.28)、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)による、ミャンマー・ヤンゴン中心部における複合都市開発事業への出資(約 56 億円)及び債務保証(約47 億円)について認可しました」と書かれており(資料2、3)、日本政府公認で、資金(3億円)が国軍に流れているのである。


ティワラ経済特区について
経済特区とは、経済発展のために特別な地位(外国資本や技術の導入など)を与えられている地域を指す。
アジア諸国では、1978年の中国をはじめ、台湾、香港、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、インド、パキスタンなど、多数の経済特区が設けられている。
ミャンマーでは、2011年ティン・セン政権が外資導入路線をとり、経済特区法を制定した。現在、ティワラ、チャオピュー、ダウェーの3カ所に経済特区が設けられているが、実働しているのはティワラのみである。
日本ミャンマー協会
渡邉秀央(中曽根政権時の官房副長官)らは、ネウイン軍政時代から深い関係を持ち(1887年~)、2012年3月に日本ミャンマー協会(会長:渡邉秀央、最高顧問:麻生太郎)を設立した。2021年時点で、正会員+賛助会員=137社にのぼっている(資料12)。
日本政府は、2011年から2018年までに、ミャンマー政権にたいして累計1兆1,368億円の有償資金協力をおこなったほか、無償資金協力、技術協力、さらには過去の債務免除等のかたちで、多大な支援をおこなっている。また、日本企業はシンガポール(タックスヘイブン=租税回避地)に合弁企業をつくり、そこからミャンマーにも投資している。
安倍政権によるてこ入れ
「ティワラ経済特区」は2012年から日本とミャンマー政府が共同で建設に着手し、2013年安倍首相(当時)は日本企業幹部40人とともにミャンマーを訪問し、経済特区建設(発電、送電、変電、港湾、通信、上水道、道路などのインフラ整備)のために総額910億円の支援を表明した。
その後、ミャンマー日本商工会議所(1996年~)の会員企業は三菱商事、住友商事、丸紅など400社にのぼり(資料13)、本格的なミャンマーへの経済進出(侵略)が始まった。現在、「ティワラ経済特区」には、50社以上の日本企業が進出しており、利益をむさぼっている。
「ティワラ経済特区」以外にも、国際協力機構(JICA)による「ダウェー経済特区」の開発が進められている。
(つづく)