北朝鮮パッシングと日本海(東海)大和堆
排外主義のテコ
日本海(東海)大和堆の漁場をめぐって、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)人民にたいする排外主義が民衆レベルで深化拡散している。
この間、政府はミサイル問題をテコにして、「危機」を煽り、戦争熱を掻き立ててきた。その結果、6月には、谷本石川県知事は「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない。…北朝鮮の国民には…生活に困窮するくらいの経済制裁を」(6/22「北陸中日新聞」)と、北朝鮮人民へのジェノサイド、民族浄化の暴言を発した。
谷本発言は特異なケースではなく、保守系政治家の共有する政治感覚であり、9月には、安倍首相は「必要なのは対話ではなく、圧力だ」(9/22同紙)、麻生太郎は「(北朝鮮の)武装難民かもしれない。自衛隊の防衛出動か。じゃぁ射殺か」(9/24同紙)と発言している。ミサイル発射のたびに、新幹線を止めたり、子どもたちに防空訓練をさせては、国民の不安を煽り、北朝鮮にたいする敵愾心を形成してきた安倍政治の結果である。
米日帝は、経済制裁で北朝鮮人民の生活を根底から破壊している。麻生発言は、もしも難民化して上陸してきたら、「自衛隊を出動させ、射殺せよ」という主張であり、トランプ・安倍による自作自演の戦争準備と一体だ。
排他的経済水域(EEZ)
しかし、今夏以降日本海(東海)大和堆での北朝鮮漁船によるイカ漁をダシにして、右も左も北朝鮮排外主義にのめり込んでいる。元来は両国漁民は大和堆(+北大和堆)を好漁場として共有してきたのだが、日帝は「大和堆は排他的経済水域(EEZ)である」と主張し、北朝鮮漁船を排除してきた。
歴史上最初に、領海外の公海上の漁業管理権を宣言したのは、1945年、米帝トルーマン大統領である。その後、1982年の国連海洋法条約で、沿岸国が海洋および海底下の生物・鉱物資源の探査・開発・保存・管理などに関して「主権的権利」をもつ水域として、沿岸から200海里(約370キロメートル)を超えてはならないとされた。
EEZとは帝国主義の領土拡張主義から発出し、海洋資源を占有するために引いた「国境」である。現在は、約160カ国・地域が排他的経済水域を設定しており、日帝も1996年6月に国連海洋法条約を批准した際、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定した。
しかし、EEZとは、「主権(他国の意思に左右されず、自らの意思で国民および領土を統治する権利)」とは一線を画した「主権的権利」と呼ばれている。したがって、大和堆は日帝の「主権」の及ぶ範囲ではなく、基本的に公海であり、歴史的にも北朝鮮漁民と日本漁民がともに漁業をおこなってきた海域である。しかし、日朝関係の対立的状況(国交断絶)のなかで、日朝漁民を主体にした協議が成立せず、日帝が一方的に大和堆を「主権的権利」のおよぶ海域と指定して、北朝鮮漁船を排除しているのである。
マスコミ上に乱舞する「排他的経済水域(EEZ)」「違法操業」という言葉はあたかも日本固有の「権利」が侵害されているかのようなニュアンスをかもしだし、この海域で日本の財物が盗まれたような被害者意識を形成している。大和堆で操業している北朝鮮漁船を指して、「赤の他人が家に入り込んで居座り、食糧を盗む」(12/15同紙)という谷本石川県知事の暴言がそのよい例である。
困窮する北朝鮮人民
大和堆でのイカ漁をめぐる日本漁船と北朝鮮漁船のトラブルが掲載されるようになったのは、7月頃からである。記事内容は、「イカ狙い漁船殺到」「違法操業」「10メートルに満たない木造船」「6~7月の最も多い時期には、500隻いた」「海保は今夏から対応を強化し、退去しない船には放水し、7月以降820隻を退去させた」などと報じている。その後の報道でも、「9月に入って、…海保は警告や放水で退去させ」(12/15同紙)たと戦果を誇っている。
北朝鮮漁船によるイカ漁の取り締まりを最初に要求(水産庁に)したのは、なんと日本共産党であった(8/9「北陸中日新聞」)。その後8月末に石川県知事らが首相官邸に赴いて要望書を提出したのである(8/31同紙)。共産党は北朝鮮排外主義扇動の先鞭をつけ、共産主義者の基本原則である国際主義のかけらもない。
11月中旬からは、北朝鮮漁民が粗末な老朽船(10メートル前後)で、日本海(東海)の荒波のなかに漕ぎ出してくる事態の深刻さが明らかになってきた。「船転覆 能登沖で北朝鮮船員救助」という記事(11/16同紙)が最初であり、その後毎日のように、北朝鮮漁船の難破、漂着そして遭難死が報じられている。(11月の漂着・漂流は28件、45人の救助・遺体収容。12月に入っても相次いでいる)
米日帝の北朝鮮包囲作戦
さて、現下の米日帝及び韓国による北朝鮮包囲、戦争政策を明らかにしておく必要がある。11月19日の「朝日新聞」によれば、「B52(米空軍戦略爆撃機)は8月下旬、単独で日本周辺まで飛行。太平洋側から東北地方南部の上空を通過し、日本海へ抜けた。その後、空自小松基地(石川県)から発進した第6航空団所属のF15戦闘機と日本海上空で合流。小松市沖の訓練空域をF15に護衛される編隊を組んで飛行した」。B52は核弾頭を搭載している現役の戦略爆撃機である(日本政府は訓練前に核弾頭を搭載していないことを確認したと言っているが、信用出来ない)。
日本政府は口を開けば「北朝鮮の軍事的挑発」と言っているが、全くのウソだ。挑発しているのはトランプであり、その尻馬に乗っている安倍政権だ。南北対話の糸口にするために、韓国政府がピョンチャンオリンピック・パラリンピック期間中(2~3月)の米韓軍事演習の延期を要請しても、トランプは応えようとしていない。
別表は、今年3月から11月までの日米、米韓共同訓練の一覧表である(「北陸中日新聞」切り抜き)。朝鮮半島周辺では、戦略爆撃機(B1など)、原子力空母(レーガン、ルーズベルト、ニミッツなど)、潜水艦などがうようよしており、訓練と称して実戦配備されているのだ。
問われる連帯の質
マスコミの紙面に登場する識者は一様に、谷本県知事や麻生太郎、そして共産党と同質であり、北朝鮮漁民をなじり、難破・遭難死を「自業自得」として突き放している。そして北朝鮮人民にたいする排外主義は「無人島窃盗事件」で頂点に達した。
なぜ、北朝鮮漁民がこの荒波のなかを大和堆での操業を余儀なくされているのか。その最大の原因は米日帝(国際社会)による経済制裁にあり、自国政府の戦争政策を変更させ得ない自身の責任を自覚もせず、北朝鮮漁民の不幸(遭難死)をほくそ笑むという、人間として最悪の感性に堕しているのではないか。
『M』紙227号では、北朝鮮旅行記が掲載され、そのなかで外国人観光客用のホテルで豊かな食事をして、北朝鮮は豊かな国であるかのような幻想を振りまいていたが、該筆者は遭難(死)を覚悟してでも出漁しなければならない北朝鮮漁民の窮状をどのように見ているのだろうか。
今、わたしたちに必要なことは、米日帝の包囲下で、核兵器に手をつけ、人民に犠牲を転嫁する北朝鮮政府の現実をも冷静に見なければならないのではないか。わたしたちは北朝鮮政府を徒に美化するのではなく、北朝鮮人民を塗炭の苦しみに追い込んでいる米日帝の戦争政策を押し止め、沖縄や全国の基地強化に反対し、戦争に一直線に向かう安倍政権を打倒し、北朝鮮人民との真の連帯を実現することである。
排外主義のテコ
日本海(東海)大和堆の漁場をめぐって、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)人民にたいする排外主義が民衆レベルで深化拡散している。
この間、政府はミサイル問題をテコにして、「危機」を煽り、戦争熱を掻き立ててきた。その結果、6月には、谷本石川県知事は「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない。…北朝鮮の国民には…生活に困窮するくらいの経済制裁を」(6/22「北陸中日新聞」)と、北朝鮮人民へのジェノサイド、民族浄化の暴言を発した。
谷本発言は特異なケースではなく、保守系政治家の共有する政治感覚であり、9月には、安倍首相は「必要なのは対話ではなく、圧力だ」(9/22同紙)、麻生太郎は「(北朝鮮の)武装難民かもしれない。自衛隊の防衛出動か。じゃぁ射殺か」(9/24同紙)と発言している。ミサイル発射のたびに、新幹線を止めたり、子どもたちに防空訓練をさせては、国民の不安を煽り、北朝鮮にたいする敵愾心を形成してきた安倍政治の結果である。
米日帝は、経済制裁で北朝鮮人民の生活を根底から破壊している。麻生発言は、もしも難民化して上陸してきたら、「自衛隊を出動させ、射殺せよ」という主張であり、トランプ・安倍による自作自演の戦争準備と一体だ。
排他的経済水域(EEZ)
しかし、今夏以降日本海(東海)大和堆での北朝鮮漁船によるイカ漁をダシにして、右も左も北朝鮮排外主義にのめり込んでいる。元来は両国漁民は大和堆(+北大和堆)を好漁場として共有してきたのだが、日帝は「大和堆は排他的経済水域(EEZ)である」と主張し、北朝鮮漁船を排除してきた。
歴史上最初に、領海外の公海上の漁業管理権を宣言したのは、1945年、米帝トルーマン大統領である。その後、1982年の国連海洋法条約で、沿岸国が海洋および海底下の生物・鉱物資源の探査・開発・保存・管理などに関して「主権的権利」をもつ水域として、沿岸から200海里(約370キロメートル)を超えてはならないとされた。
EEZとは帝国主義の領土拡張主義から発出し、海洋資源を占有するために引いた「国境」である。現在は、約160カ国・地域が排他的経済水域を設定しており、日帝も1996年6月に国連海洋法条約を批准した際、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定した。
しかし、EEZとは、「主権(他国の意思に左右されず、自らの意思で国民および領土を統治する権利)」とは一線を画した「主権的権利」と呼ばれている。したがって、大和堆は日帝の「主権」の及ぶ範囲ではなく、基本的に公海であり、歴史的にも北朝鮮漁民と日本漁民がともに漁業をおこなってきた海域である。しかし、日朝関係の対立的状況(国交断絶)のなかで、日朝漁民を主体にした協議が成立せず、日帝が一方的に大和堆を「主権的権利」のおよぶ海域と指定して、北朝鮮漁船を排除しているのである。
マスコミ上に乱舞する「排他的経済水域(EEZ)」「違法操業」という言葉はあたかも日本固有の「権利」が侵害されているかのようなニュアンスをかもしだし、この海域で日本の財物が盗まれたような被害者意識を形成している。大和堆で操業している北朝鮮漁船を指して、「赤の他人が家に入り込んで居座り、食糧を盗む」(12/15同紙)という谷本石川県知事の暴言がそのよい例である。
困窮する北朝鮮人民
大和堆でのイカ漁をめぐる日本漁船と北朝鮮漁船のトラブルが掲載されるようになったのは、7月頃からである。記事内容は、「イカ狙い漁船殺到」「違法操業」「10メートルに満たない木造船」「6~7月の最も多い時期には、500隻いた」「海保は今夏から対応を強化し、退去しない船には放水し、7月以降820隻を退去させた」などと報じている。その後の報道でも、「9月に入って、…海保は警告や放水で退去させ」(12/15同紙)たと戦果を誇っている。
北朝鮮漁船によるイカ漁の取り締まりを最初に要求(水産庁に)したのは、なんと日本共産党であった(8/9「北陸中日新聞」)。その後8月末に石川県知事らが首相官邸に赴いて要望書を提出したのである(8/31同紙)。共産党は北朝鮮排外主義扇動の先鞭をつけ、共産主義者の基本原則である国際主義のかけらもない。
11月中旬からは、北朝鮮漁民が粗末な老朽船(10メートル前後)で、日本海(東海)の荒波のなかに漕ぎ出してくる事態の深刻さが明らかになってきた。「船転覆 能登沖で北朝鮮船員救助」という記事(11/16同紙)が最初であり、その後毎日のように、北朝鮮漁船の難破、漂着そして遭難死が報じられている。(11月の漂着・漂流は28件、45人の救助・遺体収容。12月に入っても相次いでいる)
米日帝の北朝鮮包囲作戦
さて、現下の米日帝及び韓国による北朝鮮包囲、戦争政策を明らかにしておく必要がある。11月19日の「朝日新聞」によれば、「B52(米空軍戦略爆撃機)は8月下旬、単独で日本周辺まで飛行。太平洋側から東北地方南部の上空を通過し、日本海へ抜けた。その後、空自小松基地(石川県)から発進した第6航空団所属のF15戦闘機と日本海上空で合流。小松市沖の訓練空域をF15に護衛される編隊を組んで飛行した」。B52は核弾頭を搭載している現役の戦略爆撃機である(日本政府は訓練前に核弾頭を搭載していないことを確認したと言っているが、信用出来ない)。
日本政府は口を開けば「北朝鮮の軍事的挑発」と言っているが、全くのウソだ。挑発しているのはトランプであり、その尻馬に乗っている安倍政権だ。南北対話の糸口にするために、韓国政府がピョンチャンオリンピック・パラリンピック期間中(2~3月)の米韓軍事演習の延期を要請しても、トランプは応えようとしていない。
別表は、今年3月から11月までの日米、米韓共同訓練の一覧表である(「北陸中日新聞」切り抜き)。朝鮮半島周辺では、戦略爆撃機(B1など)、原子力空母(レーガン、ルーズベルト、ニミッツなど)、潜水艦などがうようよしており、訓練と称して実戦配備されているのだ。
問われる連帯の質
マスコミの紙面に登場する識者は一様に、谷本県知事や麻生太郎、そして共産党と同質であり、北朝鮮漁民をなじり、難破・遭難死を「自業自得」として突き放している。そして北朝鮮人民にたいする排外主義は「無人島窃盗事件」で頂点に達した。
なぜ、北朝鮮漁民がこの荒波のなかを大和堆での操業を余儀なくされているのか。その最大の原因は米日帝(国際社会)による経済制裁にあり、自国政府の戦争政策を変更させ得ない自身の責任を自覚もせず、北朝鮮漁民の不幸(遭難死)をほくそ笑むという、人間として最悪の感性に堕しているのではないか。
『M』紙227号では、北朝鮮旅行記が掲載され、そのなかで外国人観光客用のホテルで豊かな食事をして、北朝鮮は豊かな国であるかのような幻想を振りまいていたが、該筆者は遭難(死)を覚悟してでも出漁しなければならない北朝鮮漁民の窮状をどのように見ているのだろうか。
今、わたしたちに必要なことは、米日帝の包囲下で、核兵器に手をつけ、人民に犠牲を転嫁する北朝鮮政府の現実をも冷静に見なければならないのではないか。わたしたちは北朝鮮政府を徒に美化するのではなく、北朝鮮人民を塗炭の苦しみに追い込んでいる米日帝の戦争政策を押し止め、沖縄や全国の基地強化に反対し、戦争に一直線に向かう安倍政権を打倒し、北朝鮮人民との真の連帯を実現することである。
